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コンビニ人間

面白かった。
まず、出だしが良い。数ページ引き込まれる。途中、ひねりのない会話が続いて肩透かしを食うのだが、その抑揚のない意味のなさそうな会話もちゃんとシークエンスになっていて、あ、やられた!と思う。最初は表現が稚拙なのだが、それすらも接点を持つ人間たちのコピーなのである。作者の本来の力量が相当高いことは、のちに登場する人物らの巧みな綴り分けからうかがえる。

主人公はおそらく発達障害なのだろうけど、その思考回路の描写もみごとだし、バーベキューでの会話、白羽の言動のすべて、よく炙り出しているなあと思う。

周囲の人間の喋り方が混ざっていく、
結婚も就職もしていない者は、異物とみなされ排除される、
白羽の台詞のすべて、
とくにこれらの表現が良い。

記憶を重ねあわせるような技法も素晴らしかった。甥っ子を見てナイフを見留めたときに幼少の超合理的な行動が思い出されたり、最後に恵子がスーツ姿でコンビニの棚を直してたときに冒頭の店員ぶるおじさんのことが思い出されたり、文字に起さずとも想起される。
この文字にないが勝手に想像して補完する、のがまさに普通人間の行動なのだろう。恵子は淡々と生活しているのに、読者が先を考え心配をし、はらはら、やきもき読み進めるのだ。

恵子からみた世の合理と不合理を見るうちに、「定型発達という発達障害」の話を思い出す。現代は定型発達、人生の定性を求められる。空気を読み、共感性をはぐくみ、仕事か子育てに邁進しなければならない。白羽の縄文時代ではないけれど、もっとプリミティブな時代や土地に生きていたなら、恵子のほうが子孫を残すべき対象になろう。

第155回芥川賞受賞作。受賞みて購入したんだけど、ながらく積読していた。もっと早く読めば良かった、面白かった。