しんせかい

表紙をみて、こういうの、あんまり好きじゃないなあと思って、書き出しを読んで、ああやっぱりこういうの好きじゃない、狙っている感じが、と思ったのだけど、【谷】に入ったあたりから、めちゃくちゃ面白くなってきて、それはなぜなのかというと、このわざとらしい書体は素なのだ、この人、素なんだ、素で阿呆なんだ、ということがわかってきたからで、私はインパクトのある作品に出会うとどうにも文体を真似てしまう。
途中で、ヤマシタスミトという名前が出てきて、あれ、どこかで見たような、と表紙に戻ると作者の名前が山下澄人で、え、作者と同じ名前なの、どういうこと、と思いながら、北の国からのテーマソングが頭に流れ込んできて、この先生ってあれだよなあ、きっとあの人だよなあ、え、これ実話?実話なの?と驚きながら読み進めた。
文章は幼いのだけれど、それでいて眼光鋭い感じが好きだった。ときおり混じるエピソードの、関西人然とした滑稽さも良かった。一気に読みきって、これはほんとうに面白かった、食わず嫌いをしないで良かった、と心底思った。