海の見える理髪店

なにかの賞を受賞してタイトルを知ったので読んだ。文章が若い感じがして芥川賞だったかなと思ってたら、直木賞だった。中堅の作家さんにしては言葉遣いが軽くて、あれ?女性なのかなと思ったら男性で、あれあれ?と思っていたら、コピーライター出身の方だった。そのせいかやたらと短文や体言止めが多い。セリフ以外に口語も多い。そういう文体は正直あまり好みではなく、年を取ったせいか最近は読んでいると疲れる。
表題作の海の見える理髪店もずいぶん読みづらかったのだが、結婚式なんです、というところで込み上げてきて、おおすごいな、面白いな、と思った。店主がどこで気づいたのかな、とか、最初に厳しい印象があったのは、過去を掘り当てた人間ではないかと訝っていたのではないかな、とか想像するに楽しい。私は、こどもを設けた、のところで気がついたけど。
読み返したいな、と思いつつ、けれどなんとなく文章が疲れるので読み返さないで終わった。その他のタイトルでは、

いつか来た道 →読みづらかった、話自体は好き
遠くから来た手紙 →読みづらかった
空は今日もスカイ →読みづらかった
時のない時計 →これがいちばん良かった
成人式 →前半が良かった

とくに夫婦のやりとりのエピソードはリアルだし、少し謎解きの要素があるのも良いし、感情が盛り上がるシーンもあるし、話そのものはけっこう面白いのだけど、なんかもっと面白くなりそうなのに、と毎回思う。これは何なんだろう、話の面白さ、それに表現力が追いついていない印象を受ける。例えていえば、ストーリー作りは上手くて絵は下手な漫画家みたいな感じで、きっと原作と作画(作文?)をわければすごい面白そうなのに、と思う。その解のひとつがドラマ化映画化なんだろうけど。
音楽は編曲したり、録り直したりするけれど、そういうふうに、何年かしてからもう一度作者がリライトしたものを読んでみたい。
この本に限らず、小説のセルフカバーって、あったらめちゃくちゃ良いなあと思う。文筆家はそういうのめちゃくちゃ嫌がりそうだけど。